地 域 猫

地域猫とは

北海道ではあまりなじみのない地域猫ですが、地域猫とはどういった猫を示すのでしょうか。

地域猫とは地域の理解と協力を得て、
地域の合意と認知が得られている飼い主のいない猫をいいます。


野良猫の不妊・去勢手術を徹底し、餌の管理・フンの清掃・地域周辺の美化など
地域のルールに基づいて、適切に飼育管理された猫をいい、
野良猫の数を今以上増やさないで一代限りの生を全うさせます。

つまり周辺住民の認知が得られた猫で、排除されるのではなく地域で共生する猫を言います。


地域猫は横浜市職員の黒澤泰氏が発案者で、
地域猫の取り組みの最初は、横浜市磯子区でスタートしました。
平成9年4月、「磯子区ホームレス猫防止対策事業」が始まり、
猫問題を話し合う「ニャンポジウム」(区民と考える猫問題シンポジウム)が
開催されました。猫嫌い派と猫好き派の区民が集まって、意見をぶつけ合いながら、
お互いの妥協点を模索し、「猫の避妊・去勢手術の徹底と飼い主がルールを守ることが大事」
といった方向が見えてきました。
こうして平成11年3月、地域猫の実践方法も盛り込んだ磯子区猫の飼育ガイドライン」が
制定【4月発効】され、8月には「猫の飼育ガイドライン推進協議会」が設立、
会長は地元の獣医師が就任しました。
それから十数年あまりがたち、今では東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、
福岡県等々、多くの自治体で実施され成果を上げています。

 地域猫の考え方は長い目で見ると大変に有効な考え方です。
人が中心の生活環境では、野良猫も行き場を失っています。
野良猫は飼い猫がやむなく野良になった言わば「飼い主のいない猫」ですから、
問題のそもそもは飼い主に原因がありますし、

人間が関与して生み出されたものですから解決の道はあるはずです。

「真の地域猫」を目指して!黒澤泰



「地域猫」のすすめ

平成23年、しっぽの会主催イベント「明日へつなげ たいせつな命」では、
神戸市灘区役所様からお借りした地域猫活動のパネルを展示いたしました。
神戸市灘区では、ペット動物の適正飼養推進事業として、
毎年犬や猫に関するさまざまな事業を行っていますが、
平成22年度、灘区で活発な地域猫活動に取り組む3団体のこれまでのあゆみについて、
各団体へのアンケートの結果をもとに活動紹介されました。
北海道でも官民が協力し合い、こうした取り組みが行われることが望まれます。

神戸市灘区の地域猫活動PDF(平成22年度資料)



 TNRとは

Trap-Neuter-Return Programは頭文字を取ってTNRと略され、世界の野良猫サイトで共通して出てくる言葉で野良猫問題の推奨される解決方法です。

・Trap:トラップ(捕獲器)で野良猫を捕獲すること
      

・Neuter :ニューター(不妊手術のこと)

・Return:リターン(元の居住場所に戻してやること)Releaseが使われることもあります

つまり、trap 捕獲器で猫を捕まえて、neuter 避妊・去勢手術を施し、Return(Release)元いた居住場所に戻すことを言います。

一代限りの生を全うし、その地域から飼い主のいない、
行き場のない猫を減少させる解決方法です。



 耳先カット イヤティッピングとは

 地域でTNRをしている人たちが情報交換をしていないと、
同じ猫が捕まって不妊手術されるケースが出て来ます。
そのため、不妊手術の済んだ野良猫に、耳先のカットやピアス、タトゥーなどで
目印を付けることが普及してきました。
しかし、ピアスは炎症を起こす危険があり、また外れやすいのが欠点です。
また、タトゥーは技術的な問題や、毛で覆われると分かりにくいのが欠点です。
そのため、今は野良猫の不妊手術の識別には、耳先カット(イヤティッピング)を行うことが
主流となっています。現在、イギリスをはじめとする世界の先進国で、
猫にとって最も安全で、見た目にも分かりやすい方法として行われています。

 獣医師などの専門家でも「耳を切る」という言葉のせいか、虐待になるのではと
誤解している人も多いようですが、耳先のカットは避妊・去勢手術と同時に行うので、
猫は痛みを感じません。
カットによる出血はありますが、手術中に止血しますので、翌日元の居住場所に
戻す時には出血は止まっています。
猫同士の喧嘩でも耳先を切ることがありますので、
喧嘩でちぎれた場合と判別しやすくするために、90度以上でカットをします。



 当会指定病院では耳先カット(イヤティッピング)を実施しています。
オスは右耳、メスは左耳、正面から見るとオスは左耳、メスは右耳と反対になります。

※世界で最も伝統のある愛護団体「王立動物虐待防止協会(RSPCA)」にも
この方法が認められいて、耳先カットは野良猫の安全と福祉のために大変有効です



  飼い主のいない猫との共生を 【私たちにできること】
 

 野良猫に関する問題はなかなか解決策が見つからないのが現状です。
正直、私たちしっぽの会も試行錯誤ですが、始めなければ何も変わらないと
2010年、「しっぽの会地域猫基金」(のちに「飼い主のいない猫基金」と改名)を発足し、
第一歩を踏み出しました。

 地域には野良猫に迷惑し快く思ってない人、不幸な命に心を痛めている人など、
人それぞれ様々な考えの方があります。
しかし、飼い主のいない猫は、もとを正せば飼い主がいたわけですから、
途中から過酷な運命を辿ることになった云わば犠牲者です。
また、別な地域の人が、餌だけ置いて立ち去る話も良く耳にします。
しかし、これでは不幸な猫たちはいつまでたっても減りません。
関わるなら地域住民の理解を得て、地域住民のお手伝いをする立場として参加すべきでしょう。
あくまでも、地域住民が主体となり、地域の実情に沿ったルールで取り組んでいかなければ、
地域猫の活動を継続していくことは難しいのではないでしょうか。
個人で野良猫を捕獲し、病院で避妊・去勢手術を施して面倒をみている人は、
経済的な負担も大きいうえに、年齢が高くなって続けられなくなった人も多く、
個人で続けていくのは労力と経済力が必要で、並大抵のことではありません。

 では、野良猫を命のあるものとして排除するのではなく、
不幸な命を減らし共生していくにはどうしたらいいのでしょう。
地域の中で互いに違った立場や考え方でも、
命を大切にすることは合意できるところだと思います。
飼い主のいない猫対策は、活動を理解していただくための以下のようなPR活動から
始めてみては如何でしょうか。

①飼い猫は屋内飼育する
②万が一の逸走にそなえ身元が判明できる連絡先が明記された首輪や迷子札を付ける
③行き場のない不幸な子猫を産みださないよう、飼い猫に避妊・去勢手術を施す

地域環境の観点から、町内の回覧板などを利用させていただくのもいいかも知れません。

また、地域のコミニュケーションは何より大切です。
東京や横浜では、不用品を持ち寄ってバザーを開き、手術代を捻出している町内会もあって、
野良猫問題がきっかけとなって地域がまとまったとの意見もあったそうです。
問題は多々あると思いますが、野良猫もひとつの命を持っています。
動物を殺すことは誰にとっても気持ちのいいものではないはずです。
目の前から排除するのではなく、命あるものが一代限りの生を全うできるように、
地域の住民同士が連携し行動することで野良猫問題解決の道が見つかるのではないでしょうか。
温かく地域の住猫として居住を許してあげたいものです。




 当会では捕獲器の貸し出しを行っています。しっぽの会までお問い合わせください。





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